NGT48・荻野由佳、速報1位という名の苦悩 少女がその先に見たもの あふれた感謝の涙、広がる未来

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https://www.youtube.com/watch?v=tAbQxBwY7zQ

「私をアイドルにしてくれてありがとう」。6月17日、沖縄県で行われた第9回AKB48選抜総選挙のスピーチで必ずファンに伝えようと決めていた言葉だ。

 5月31日の速報順位では、2位の松井珠理奈(SKE48)に2万票以上の差をつけ、まさかの1位。だれよりも本人が一番驚き、とまどった。

 思わぬ伏兵の登場に直後からマスコミ各社の取材が殺到。以降、グラビア撮影やテレビ出演など目まぐるしい日々が続いているが、本人に全く気負いは感じられない。JR大宮駅に降り立ったこの日もどこか涼しげで、真夏に咲く一輪のヒマワリのような、おおらかなオーラをまとっていた。

 ファンの間では苦労人として知られる。小学6年のときにAKB48に憧れてから約4年間、オーディションを受け続けるもすべて落選。結果が出ない自分にいら立ち、つい家族に辛く当たってしまうこともあった。「あのときは自分のことばかりで、家族の支えがどんなにありがたいか全然分かっていなかった」。

 その後、バイトAKB(2014年9月~15年2月)の活動を経て、15年5月、AKB48グループ第2回ドラフト会議で当時誕生したばかりのNGT48(新潟)から2巡目で指名。念願だったアイドルへの扉が開いた瞬間だった。それまで自炊も洗濯もしたことがなかったが、弱冠16歳の少女にとって、もはや見知らぬ地での一人暮らしに迷いはなかった。
 
 グループ発足からはや2年、現在はチームNIIIの副キャプテンとしてメンバーから慕われる存在に。悩みごとを相談される機会も増えた。「私もたくさんの方に育てていただいた。その分、みんなにも何か恩返しがしたいんです」。

 自己紹介のキャッチフレーズは『何があってもへこたれない』。理想と現実のはざまで、もがき苦しみ、何度壁にぶち当たっても決して夢をあきらめなかった彼女ならではの表現だ。

 「速報は何かの間違いだったんじゃないか」「無名の私がAKB48グループ全体にとって大切な総選挙を壊してしまうんじゃないか」。速報以降、そんな不安に駆られる毎日が続いた。総選挙当日も直前までスピーチに悩んだが、「これまでの感謝の気持ちを素直に話せば良いんじゃない?」と同じチームの先輩、柏木由紀(AKB48兼任)が背中を押してくれた。

 わがままを聞いてくれた家族、地元出身じゃない自分を受け入れてくれた新潟のファン、そしてドラフトで選んでくれた先輩、支配人への感謝などが、涙と一緒にとめどなくあふれ出てきた。

 今月21日、自分をこの世界に導いてくれた恩人、キャプテンの北原里英が卒業を発表。「独り立ちした姿をキャプテンに見せてあげるのが一番の恩返し」。その視線の先には、人一倍努力を重ねた彼女にしか見えないNGT48の新たな未来が広がっている。

■荻野由佳

1999年2月16日、埼玉県越谷市出身。A型。
NGT48チームNIII副キャプテン。
愛称は、おぎゆか・ゆか。
6月17日、沖縄県で行われた第9回AKB48選抜総選挙では第5位となり、初の選抜入りを果たした。

埼玉新聞